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春秋社 メールマガジン【Vol.048】
   2023年 3月 3日配信
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 巻頭言!
 安倍元首相殺害事件以降、メディアは旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の話題でもちきりでしたが、最近エホバの証人も俎上にあがりはじめましたね。子どもに輸血を受けさせないことなどが児童虐待にあたるというわけです。
 輸血拒否は、信教の自由と科学的態度が真っ向から衝突する厄介な問題で、過去には患者の輸血拒否の意志に反して輸血したことが裁判になり、最高裁で医師側に損害賠償を命じる判決が確定した例があります。
 一方、子どもの輸血拒否は、親の信仰を子どもに押しつけることになりかねませんから、医療現場では親の親権停止を家庭裁判所や児童相談所に求め、同意がなくても輸血することがあると聞きます。厚生労働省のサイトに掲載されている「宗教的輸血拒否に関するガイドライン」を見ると、子どもが15歳以下か医療に関する判断能力がないと判断される場合、子どもが15歳から18歳までの場合などに分け、さらに、子どもも両親もともに輸血を拒否している場合、両親は拒否しているが子どもは輸血に同意している場合、両親のうち片方は輸血に同意している場合などと、実に細かく区分をして、繊細な対応を求めているようです。
 みなさんは輸血を拒否する信仰をどう思うでしょうか。ばかばかしいと思いますか。それとも、これも信仰であり尊重すべきだと思いますか。
 簡単に答えは出せませんが、こうした問題をはじめとする宗教と医学の対立や関係性に真摯に向き合っているのが、 杉岡良彦 先生の新刊 『共苦する人間――医学哲学から宗教と医学を考える』 です。
 輸血拒否ではありませんが、信仰が子どもを死に至らしめた事案や教義が科学的医療を否定しているようなケース、マインドフルネスのように宗教的実践が医学にとり入れられている例や、信仰が健康に寄与すると示唆する研究などもとりあげて、いわば宗教と医学の関係を多様な視座から包括的に分析する書籍は、正直、他に例を見ないと思います。
 まえがきにも書いてあるとおり、杉岡先生も宗教を正面からとりあげることには当初抵抗があったといいます。医療者のなかには宗教に無関心ないし否定的な態度があることにも触れています。それでもあえて宗教と医学の関係を論じるのは、なぜか。
 伝統的に人間の死や苦に向き合ってきたのは宗教でした。現代では医学も人の死や苦に向き合います。ただし、人が必ず死ぬ以上、医学はある意味敗北を宿命づけられています。であれば、患者の残りの生を充実したものにするために、医学が宗教の知恵を借りる必要もあるでしょう。
 現代の諸問題にもストレートに関連するこの力作、ぜひぜひ注目してほしいと思います。(K2)

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■目次■
▼webマガジン「web春秋 はるとあき」
▼「じんぶん堂」好評連載中!
▼新刊案内(2月刊行)
▼近刊案内(3月刊行予定)
▼編集後記
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webマガジン「web春秋 はるとあき」

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◎新連載◎
○「文字の渚」 岩切 正一郎
古今東西の表現芸術のなかから、言葉の「変形」を読み解き、芸術の持つ力を再考する。

○好評連載○
〇「人生というクソゲーを変えるための仏教」 ネルケ 無方
人生というクソゲーを遊んで楽しい本当のゲームに変える方法を探る。
【第8回】語り得ないことを語ろうとする人たち

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★「じんぶん堂」好評連載中!★
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出版社と朝日新聞社による、“人文書の魅力発信していくプロジェクト”
「じんぶん堂(powered by 好書好日)では、著者みずから語る書籍紹介や読み物など、魅力的な内容をお届けしています。ぜひご覧ください。※毎週木曜日更新(月3回)

◇2月16日 公開◇
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◇2月23日 公開◇

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新刊案内(2月刊行)
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A5判/528頁/6,600円
初期密教経典から中期密教三経典への軌跡。

四六判/304頁/2,860円
永井均の哲学を受け継ぎ、アップデートする。

●涙の果て――知られざる女性のハリウッド・メロドラマ
四六判/416頁/4,840円
人間存在を探究するカヴェル映画論の頂点。

A5判/544頁/8,800円
山崎闇斎の思想の本質に迫る学際的論考。〔口絵1〕

四六判/448頁/3,960円
医学と宗教の共存と相互理解を探る。

楽譜 ●カール・チェルニー 12の前奏曲とフーガ――「フーガ演奏教本」作品400
春秋社編集部 編集・解説
菊倍判/144頁/3,630円
19世紀ピアニズムの知られざる金字塔!
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近刊案内(2023年3月刊行予定)
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『えほん 般若心経』
前田 まゆみ
B5変/32頁/1,980円
もっとも有名なお経をやさしいことばと美しい絵でつづる珠玉の絵本。一般の読者(とくに高齢者)に向けて、般若心経の「空(くう)」の考え方をわかりやすく説く。英文付き。
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『日本のキリスト教迫害期における宣教師の「堅信」論争』
ベルナット・マルティ・オロバル / 島田 潔 / アントニオ・ドニャス
A5判/296頁/8,800円
キリスト教徒の入信儀礼「堅信」をめぐる、江戸時代の禁教前に起こった、イエズス会と托鉢修道会との論争を記した、歴史的にも貴重な史料を紹介する。
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『ポリヴェーガル理論 臨床応用大全 ――ポリヴェーガル・インフォームドセラピーのはじまり』
ステファン・W・ポージェス / デブ・デイナ 編著   花丘 ちぐさ
A5 判/612頁/4,620円
提唱者ポージェスをはじめヴァン・デア・コーク、オグデン、ラヴィーンら世界的権威と多
彩な専門家が大集結。理論に基づく22 の切り口からトラウマ癒す実践的アプローチ。------------------------------------
『サイド バイ サイド ――共存する仲間たち』
比企 寿美子
四六判/192頁/1,760円
虐待や介護が問題視されている昨今、いのちの尊さを見つめ直す。他のいのちと触れ合うことで、孤独が癒されともに生きる歓びを分かち合う。
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『ヴィラ=ロボス ――ブラジルの大地に歌わせるために』
木許 裕介
四六判/500頁/4,180円
ブラジルの作曲家の巨匠ヴィラ゠ロボスの評伝。あらゆる音楽ジャンルに繋がる膨大な作品を、その生涯や伝説とともに解説。世界を旅した作曲家が創造した音楽と魂に迫る。
(※刊行時期は変更となる場合がございます。)

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□編集後記□
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 「♪今日はたのしいひな祭り」 女の子のすこやかな成長を願う、雛祭り(桃の節句)。おうちで雛人形を飾る世帯は少なくなっていますが、全国各地ではさまざまなかたちで雛祭りが催されています。とりわけ今年は新型コロナウイルスの影響で“四年ぶりの開催”となった地域も多く、“たのしいひな祭り”の風景がすこしずつ戻ってきているように感じます。

 今月発売となる 『えほん 般若心経』は、写経をはじめたけれど難しいので解説書がほしい、と仰るお母様のために手づくりされた絵本をきっかけとして生まれた、絵本作家・ 前田まゆみ先生による最新刊です。『野の花えほん』や『翻訳できない世界のことば』(翻訳)で知られる著者が、あたたかみのある絵とやさしいことばで般若心経の「空(くう)」の考え方をわかりやすく説く、贈り物にぴったりの一冊です。

 母から子へ、健康を祈る気持ちは何代も前から受け継がれ、子は無事に成長し、自らの子を、また親の健康を心から願うもの。そうした気持ちをより強く感じさせる3年間だったように思われます。これからすこしずつ日常を取り戻していくなかで、小社の書籍がみなさまの「こころの健康」を支える一助となれば幸いです。みなさまのご健康を心よりお祈り申し上げます。(A)


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