男性ホルモン低下で意欲が減退し、病気のリスクも高くなる
テストステロンの働きは、性機能を正常に保ち、筋肉や骨を強くするほか、動脈硬化を防ぎ、認知機能を高める作用もある。なお、テストステロンは主に精巣(睾丸)から分泌されるが、女性でも副腎や卵巣から分泌されている。
テストステロンが低下し、体に前述のような不調が起きても、「ただ単に疲れているだけ」「年を取ったせいだろう」などと見逃されがちだ。だが、テストステロンの分泌が減ってLOH症候群のレベルまで落ちると、男性の心身に深刻な影響が表れ始め、やがて寿命をも左右する病気につながってしまう可能性があるのだ。
男性ホルモンが低下すると、筋力が低下し内臓脂肪が増え、動脈硬化が進行するので生活習慣病のリスクが上がってしまう。
テストステロンは、性格や社会性などメンタル面にも大きな影響を与えていることが分かってきた。
「テストステロンは社会の中で自分をアピールするのに欠かせない“社会性のホルモン”。難しいことに挑むチャレンジ精神、他人や社会に貢献しようとする気持ち、公平さや正義を求める気持ちなどが、テストステロンによって強くなります。逆に、人と会わないでいることから分泌が低下する恐れがあります」(堀江さん)
したがってテストステロンが少なくなると、チャレンジ精神や競争心が衰え、意欲が低下してしまう。テストステロンが低い人はうつ病になりやすいという報告もあり、実際にうつ病を発症することも珍しくない。生活習慣病や心臓病のリスクが高くなるせいか、テストステロンが低い男性は寿命が短い傾向にあるという研究結果もある。
しかしテストステロンが低下するだけで、なぜこのような症状が起き、病気のリスクが上がってしまうのだろう? そもそもホルモンとはどういうもので、どのような仕組みで体に作用するのか?
微量でもホルモンが効果を発揮するワケ
「ホルモン」とはよく聞く言葉だが、どのようなものか具体的に知っている人は、それほど多くはないだろう。ホルモンは、体内の睾丸などの「内分泌器官」で作られて血液により運ばれる「情報伝達物質」のこと。ホルモンがターゲットとなる細胞に到達すると、ごく少ない量で大きな効果を生み出す。ピンポイントで作用を発揮しているわけである。
腎臓の上に乗っている「副腎」という臓器から分泌される「アドレナリン」が1900年に発見されて以来、これまでに実に多くのホルモンが見つかってきた。現在確認されているホルモンは100種類以上ある。
テストステロンは、“社会性のホルモン”とも呼ばれ、人に会う機会が減り、引きこもりがちになると、分泌が減ってくる。
テストステロンが低下することによって、メンタル面への影響もあり、意欲が衰え、抑うつ状態になってしまうこともある。
テストステロンは生活習慣の影響を受けやすいが、逆に言えば、生活習慣の改善で再び分泌を増やすことだってできる。
たんぱく質、ビタミンB群をしっかりとろう
生活習慣を見直すためには、何よりバランスの取れた食事をとる必要がある。テストステロンの分泌が減ったことで男性更年期障害の症状が出ているのだから、「テストステロンの分泌を増やす食材」をとにかくとればいいと思うかもしれないが、それでは栄養に偏りが生じてしまい、体調を崩す原因となる。
堀江さんは、意外と不足しがちな、たんぱく質とビタミンB群を意識してとることが大切だと言う。
男性更年期障害にならないために意識してとりたい栄養素
- たんぱく質 …… 不足するとドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質が減りうつ症状につながる
- ビタミンB群 …… 不足すると疲労や肩こり、筋肉痛につながり、気分が落ち込むなどの症状に
食事からとったたんぱく質は、体内でアミノ酸に分解され、様々なものの原料となる。その中には、快感をもたらし意欲を起こさせるドーパミンや、精神を安定させ睡眠リズムを整えるセロトニンなどのホルモンも含まれる。しかも、ドーパミンの原料となるチロシンや、セロトニンの原料となるトリプトファンは、体内で作ることができず、食事からしかとることができない「必須アミノ酸」だ。
「食事でたんぱく質をきちんととらないと、神経伝達物質であるドーパミンやセロトニンなどが不足し、抑うつの症状につながる場合があります。たんぱく質をしっかりとることは、男性更年期障害に陥らないベースとして重要なのです」(堀江さん)
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