(日経Gooday
2020/1/27 より抜粋改編)
毎年、インフルエンザを発症する人が後を絶たない。ありふれた病気と言えるにもかかわらず、多くの人が「誤解」していることもたくさんあるという。そこで感染症に詳しい総合診療医・感染症医の岸田直樹先生(Sapporo Medical Academy代表理事)に、「よくあるインフルエンザの誤解」について解説してもらった。
インフルエンザになったら必ず受診すべきか
●持病のない成人であれば、「絶対に受診すべき」というわけではない
インフルエンザにかかると、とても高い熱が出て命を落とす人もいる。そのため、インフルエンザになったら医療機関に行くべき、と思う人が多いが、必ずしもそうではない。
インフルエンザは健康な成人であれば、時間とともに自然に治る。それに検査は100%正しいとは言えず、抗インフルエンザ薬も、飲んで半日から1日早く熱が下がるかもしれない、という程度なので医療機関に行くメリットはあまり大きいとはいえない。
しかし、これは、あくまで持病のない成人の場合であり、「ハイリスク者」つまり、5歳未満の乳幼児、65歳以上の高齢者、妊婦、ぜんそく・心疾患・糖尿病などの持病を持っている人などは命にかかわる場合もあるので、重症化しないうちに受診した方がいい。
熱は下げた方がいい?
●すごくつらいのでなければ、基本的に下げなくてもいい
インフルエンザになると経験しないような高熱が出るが、無理に下げる必要はない。
すごくつらいときはやむを得ないものの、下手に熱を下げると、逆に回復が遅くなる可能性もある。体温が高いとウイルスの増殖を抑え、免疫細胞を活発にする作用があるので薬は飲まず寝てさえいれば、通常の風邪なら数日、インフルエンザでも1週間程度でかなり良くなるはず。ただし、39~40℃を超えるようなら、念のため受診した方がよい。
解熱剤が効かない!
●インフルエンザに使える解熱剤は、そもそも効果が分かりにくい。
医療機関でもらった解熱剤が「効かない」と感じることがあっても、「効いていないわけではない」。 インフルエンザに使えるのはアセトアミノフェン(商品名:カロナールなど)だけ。このアセトアミノフェンは安全性が高い分、作用がマイルドで熱が1℃下がる程度なので「効いていないように見える」。
熱を下げたいときは太い血管が通っている、首、わきの下、脚の付け根を冷やす「3点クーリング」という方法が、血液を冷やし、下熱効果がある。 額を冷やしても効果はないが、気持ちが良ければ冷やしていい。
※ 解熱鎮痛薬として知られるロキソプロフェン(商品名:ロキソニンなど)やジクロフェナク(商品名:ボルタレン、ナボールなど)は、インフルエンザのときに使うとインフルエンザ脳症のリスクを高める可能性があるため、使用しない。
一度インフルエンザになったら、その冬はワクチンの必要なし?
●一度かかった後でも、ワクチンを打つ意味はある
インフルエンザウイルスにはいくつかのタイプがある。感染するとその免疫ができて、同じ冬に同じウイルスに再び感染はしないが、たとえばA型に感染した後、B型にも感染する可能性があるので、一度インフルエンザにかかった後でも、ワクチンを打つ意味はある。
ワクチンに100%の効果があるわけではないが、「健常成人での発症予防率は70~90%(*1)との報告があり、重症化防止を期待できる。特に「ハイリスク」の人はもちろん、一緒に暮らしている家族もワクチンを打って予防すべきだろう。
*1 MMWR. July 13, 2007 / Vol. 56 / No. RR-6
新コロナの予防には、インフルエンザと同じく、手洗い、手指の消毒を十分にし、
風邪症状など疑わしい人はマスクを必ず着用しましょう。 |