――國澤センター長「『花粉症対策にヨーグルト』というのは、ある意味合っているとも間違っているとも言えます」
いきなりナゾめいた返答だ。『ヨーグルトが良い』と信じて、ひたすら食べている人も少なくないだろう。
――國澤センター長「そもそも花粉症は、免疫のバランスが乱れ、花粉に対して異常に反応してしまうことで起こります。『花粉症対策にヨーグルト』と言われ出したきっかけは、『免疫バランスの偏りを乳酸菌が改善できる』という研究結果から言われるようになったのだと思います」
「免疫」は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物を攻撃して自分の身を守る「防御システム」だ。この防御システムが異常をきたすことでさまざまな疾患を引き起こすようだ。
――國澤センター長「体の中では、常に免疫細胞がパトロールをして有害物の排除に働いています。実はこの免疫細胞の半分以上が腸に存在しています。いわば、腸は『体内における最大の免疫臓器』なのです」
体のパトロール隊が腸に集中するのはどうしてだろうか?
――國澤センター長「腸が体外と最もたくさんのやりとりをする器官だからです。もちろん、体の皮膚表面や呼吸器も外とつながっていますが、特に腸などの消化器には飲食を介してさまざまな物が入ってきます。そのため、ウイルスや細菌などの悪いものが侵入してくるリスクも高く、それらを防ぐために、パトロール隊である免疫細胞が特に警戒している場所なのだと考えられます。また、腸で吸収される栄養素や食品成分は、免疫のコントロールにも関わっています」
腸は常に外敵の脅威にさらされているからこそ、免疫細胞が集中しているようだ。
腸内環境が悪化するとアレルギーの引き金に?
体全体にはどう影響するのだろうか?
――國澤センター長「腸内環境を整えることが、体全体の免疫バランスを整えるための有効な方法のひとつだと言えます。体のさまざまな状態との関連も言われていますが、特に最近では、腸の状態が脳機能にまで影響を与えるという『脳腸相関』が注目されており、そこでも免疫が関わっているようです」
花粉症とはどうつながってくるのだろうか。
――國澤センター長「本来なら、免疫はウイルスなどの有害物を排除しつつ、体に必要な食べ物の成分や日常的に触れることの多い花粉などには過剰に反応しないようにしてバランスを保っています。ところが、このバランスが崩れ、普段だと反応しないものに反応するようになることでアレルギーを引き起こしてしまうのです。いわば『免疫の誤作動』ですね。つまり花粉症は、免疫細胞が花粉に対して過剰に反応するようになった状態です」
以前は花粉症ではなかったのに、急に花粉症になって苦しむことも少なくない。
――國澤センター長「食事の影響や周りの環境がきれいになりすぎたなど、さまざまな原因があると言われています。原因は人それぞれだと思いますが、体内の免疫バランスが徐々に乱れ、免疫機能がコントロールできないレベルにまでなるとアレルギー体質になり、花粉症などの症状として現れてきます」
「花粉症になった」ということは、「アレルギー体質に傾いた」ひとつのサインということだろうか?
――國澤センター長「そう考えて良いと思います。花粉症になるということは、別のアレルギーになる可能性も高いということ。たとえば赤ちゃんではアトピー性皮膚炎と食物アレルギーの両方がある子が多い。花粉症の場合も1種類の花粉だけではなく、複数の花粉に対するアレルギーを持っている人が少なくありません。つまり、特定の花粉症だけの改善を考えるよりも、アレルギー体質そのものを改善することが大切なのです」
ヨーグルトや乳酸飲料が誰にでも良いというわけではない
アレルギー体質にはどうしてなるのだろうか?
――國澤センター長「食事や周辺環境などさまざまな原因があると言われていますが、最近注目されているのが『腸内細菌』です。腸内には細菌が100兆個もあると言われていて、善玉菌や悪玉菌、その時々の優位な菌に従う日和見菌が存在しています。食生活や生活習慣の乱れなどで悪玉菌が優位になると腸内環境が悪化。アレルギーやさまざまな病気の引き金となります」
腸内環境を整えることが、アレルギー体質の改善や免疫機能の正常化の近道のようだ。
――國澤センター長「この腸内環境を整える、つまり『整腸』という観点から、ヨーグルトなどに使用される乳酸菌に注目が集まったのです。ただし、ヨーグルトや乳酸飲料が誰にでも良いというわけではありませんので、注意が必要です」
――國澤センター長「ヨーグルトそのものというよりも、そのときに食べた乳酸菌が体調に合わなければ、おなかを壊すこともあります。それぞれの人の腸内細菌との相性がありますから、見極めが大切です」
「ヨーグルトが良さそうだ」と、むやみに食べるのは良くないのだという。では、自分の腸内細菌に合う菌を見つけるにはどうすれば良いのだろう?
――國澤センター長「ヨーグルトを食べると『おなかを壊す』ことがあるということは、その乳酸菌が自分の腸内細菌と相性が悪いということです。逆に快腸なら、相性が良いという一つの目安になると思います。2、3週間様子を見てご判断いただきたいですね」
――國澤センター長「これまでの研究から、一言で『乳酸菌』と言っても、それぞれ特徴的な性質があることが分かっています。例えば、『免疫を高める菌』や『腸で免疫の暴走を抑える菌』もいます。さらに最近では、『内臓脂肪を減らす菌』も見つかっています。自分が欲しいタイプの乳酸菌を選ぶことができるのは、一つのメリットだと思います」
そもそも、胃酸は強力だ。胃を通過した乳酸菌は腸まで無事に届くのだろうか。
――國澤センター長「乳酸菌が出す乳酸も『酸』ですので、乳酸菌は酸性の環境には比較的強いと考えられます。ただ、空腹時は特に胃酸が濃く、胃は強い酸性環境になっています。食後の方が胃酸が薄まりますので、乳酸菌が生きた状態で腸まで届きやすいと思います」
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