太った中高年男性に多いと言われる「睡眠時無呼吸症候群」。心筋梗塞などの重大な病気を合併しやすいため、早く治療を始めることが大切だ。だが、女性や高齢者など、やせている人は病気の存在に気づかないことも多く、潜在患者は相当数に上ると見られている。睡眠時無呼吸症候群の症状や検査、治療の最新情報について、昭和大学病院附属東病院の睡眠医療センター長、安達太郎氏に聞いた。
※ 睡眠時無呼吸症候群には、気道が塞がって起こる「閉塞型」のほか、呼吸努力を止めてしまう「中枢型」、その「混合型」などがありますが、今回は約9割を占める閉塞型の睡眠時無呼吸症候群について解説します。
日本人は、やせている人にも睡眠時無呼吸症候群が多い
睡眠時無呼吸症候群はどのような原因で起こる病気なのでしょうか。
安達 私たちは普段、あごの骨(下顎骨)の重さを感じることがありませんが、下顎骨は1kg程度もある重い骨です。仰向けで寝ると、重力の影響で下顎骨が下がり、同時に舌の付け根(舌根;ぜっこん)も落ち、空気の通り道(気道)が塞がるようになります。そうやって呼吸が止まったり浅くなったりするのが、閉塞型の睡眠時無呼吸症候群です(図1)。大きないびきは、やはり重力の影響でのどの奥にある軟口蓋や口蓋垂(のどちんこ)が下がり、ブルブル震えて起こります。
気道が塞がる理由として多いのは肥満です。体の脂肪は、お腹やお尻だけではなく、首にもつきます。その脂肪が気道を圧迫して狭窄しやすくなるのです。
しかし、日本では欧米ほど肥満の人が多くない割に、欧米並みに睡眠時無呼吸症候群の患者がいます。その原因は、あごが小さく口の中のスペースが狭いという、東洋人特有の骨格です。このような骨格の人は、やせていても少しあごが落ちるだけで無呼吸になります。そのため、女性にも無呼吸は起こりますが、「太っていないから私は違う」と思うのか、あるいはこの病気で受診するのが恥ずかしいのか、放置している人が多いようです。
年を取ると筋肉が落ち、あごを支える力が弱くなるので、高齢者も要注意です。高齢者の中には、かなりやせているのに重度の睡眠時無呼吸症候群がある人もいます。
睡眠時無呼吸症候群ではどのような症状が出るのでしょうか。
安達 中高年男性の場合、「いびきが大きい」「長く呼吸が止まる」と家族に指摘されて受診する人が多く見られます。自覚症状として多いのは、昼間のひどい眠気です(表1)。
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夜間、呼吸が止まったり浅くなったりするために中途覚醒(寝入った後に2回以上目が覚めること)を起こすこともあります。私が懸念するのは、中途覚醒があっても、単に「年を取って眠りが浅くなったからだろう」と考え、睡眠時無呼吸症候群からきていることに気づかない人が多いことです。睡眠時無呼吸症候群を見逃している高齢者はかなり多いと思われます。